諸永裕司

 ごみを捨てても壁を壊しても元通りに戻す必要はなく、追い出されることもない。そのうえ、騒いでも火事や事故を起こしても、まず責任を問われることはない――。 これほどのやりたい放題が許される契約しか結べないとしたら、アパートの部屋を貸そうとする家主は現れないだろう。 だが、そのありえない家主こそ、在日米軍に基地を提供している日本政府の姿なのだ、と衆院議員の屋良朝博は言う。 「沖縄や東京の米軍基地で有機フッ素化合物のPFOSやPFOAによる飲み水や地下水の汚染が事実上、放置されているのもそのためです。そして、その原因はやりたい放題が許される契約、つまり日米地位協定にあるのです」 日米地位協定は、日米安全保障条約にもとづいて駐留する米軍の施設・区域の使用と地位について規定している。いわば、基地という借家の使い方についての約束だ。 だが、住民にとってもっとも切実な環境問題に直接かかわる条項はない。